言語創作と創作世界(寄稿)

言語を作ってみよう~その2~

例が無いと分かりにくいですから、恥ずかしながら筆者の創作から「Wilma(ウィルマ)」という言語をあげてみます。
この例は現実で言語が発生する過程とはしばしば異なります、悪しからず。

Wilmaという言語が使われるのは筆者の「Zevtag(ゼタ)」という創作世界です。
この世界は地球の並行世界で、数々の災害を経て人類が数を減らし、変わり果てた世界で新たに発見された生命と共生しているといったものです。

Wilmaという言語は、もともと「frma」という妖精のような種が使う言語が発祥です。仮に原始Wilmaとしましょう。
原始Wilmaを使っていたfrmaたちは、巨大な樹を寝床として家を建て、植物の導管を水道として使ったり、ツタを編んでワイヤーとして使ったりと植物に依存した生活をしていました。
frmaは死ぬと、正確には死と少し異なりますが、樹に変化してしまいます。
また、彼らfrmaは魔法のような技術を持ち、ごく簡単な術であればほとんどの個体が使うことができます。

これらから、例えば原始Wilmaでは

  • 樹を神のように敬う
  • 導管のことを一単語で示す語彙がある
  • 植物に関して区別する語彙が非常に多い
  • 「死」と「変化」は同じ単語
  • 術を用いることを示す一単語の動詞がある

といったような特徴を持っています。

また前項の「音」について、例えば

  • ”TH” = すきま風、葉擦れ
  • “D” = 大地、礎、しっかりとしたもの、硬いもの
  • “R” = 震えるもの、空気、音

こういった意味が音に与えられます。

さて、実はこの原始Wilmaは人間にとっては極めて難解でした。
彼らfrmaはとても耳がよく、発声機構が人間より高度で、そして音楽を好む種族です。
彼らにとって「和音を発声する」というのは日常で、それを聞き分けるのも日常ですが、人間は訓練なしでは難しいでしょう。
この和音に細かい感情的なニュアンス、人間なら文法規則で表現するような決まり事(命令形や疑問形など)を内包します。
人間は、文明復興に際して彼らの持つ技術などが大変に有益で学びたい。が、言語が壁となります。
frmaもまた友好的で好奇心旺盛な種なので、人間と交流をはかるのですが、言語がやはり壁になります。

ここで思い出してほしいのが言語が広まるのは「ある種の強制力」に基づくことです。
この場合は上記までの例と比べて特異ではありますが、双方が互いの言語をすり合わせて「Wilma」という言語を創造しました。
魔法を使う上で認識しているべき概念があるので語彙はfrma側をベースに、和音を単音に分解して、代わりに人間が知る文法事項を当てはめました。
更に人間側がこの言語を初等教育の必修とし、この世界ではWilmaという言語が標準語となるに至ります。

さて、このような設定を自身で作りました。
実用に耐える言語であるには、せめて文字レベルではなく単語レベルで語彙を作らなくてはいけません。
では例として「(生物が)存在する」という語を考えます。日本語なら「いる」で英語では「be」でしょう。
生物が存在するという状態は「生きている」ということで、frmaの考え方で更に深掘りすると「確たる礎のもとに、ゆるぎない自己が、絶えず変化しながらもそこにある」ということです。
「礎」は”D”、自己を示すのは”I”、それから変化する様子は”F”が示します。
こうして「存在する」という単語は「dif」と決定しました。
他に「昨日」はfrmaの考えで「緩やかに過ぎ去る、惑わせる過去の光」という原義から「lsa」です。

文法規則までになると収拾が付かないので切り上げますが、このような考えをもとに筆者の創作言語は作られました。
重要なのは、あまり既存の言語の概念に浸食されないように気を付けて、自分自身やその世界の人々が対象をどのようなものとして捉えているかをしっかりと考えることだと思います。

創作においてその説得力を上げたいとき、それが何から導いたものかを自分で説明できると望ましい……これは筆者の持論です。
たとえ嘘であっても、魔法なんて無いとしても、それが何かに基づいているだけで「実在しそうだ」と思えてきてしまうのが人間の想像力の力だと思います。
ただしこれらの考え方は等しく、神秘性からかけ離れていきます。神秘性は突拍子もなさから現れるものだからです。
もしも創作で神秘性も持たせて、なおかつ筋の通った理論を使いたい場合、きっとその考えを導くに至った論理を巧みに隠してやる必要があると思います。これもあくまで一つのやり方です。
創作に答えはありませんが、言語について考えたいけど考え方が分からなかった方の助けになれば幸いです。

もっと調べたい人のために

人工言語の作り方
http://conlinguistics.org/create/index.html

架空の言語を創作することについて、詳しくまとめてあります。
簡単な言語創作から、より高度な学術的知識に基づいた内容まで幅広く助けになることが書いてあります。

SF・ファンタジーに使える(?) 架空言語の作り方Takamuko::blog
http://takamuko.ldblog.jp/archives/25708062.html

簡潔に流れを説明し、難しい内容に触れながらもやる気を削ぐほどに複雑な内容についてはキーワードに触れるにとどめてあります。
軽く作り方を流し読みし、気になった項目はキーワードを調べて深めるといった形で読むと良いかもしれません。


CaibeR( @CaiberMAKISE )さん、寄稿いただきありがとうございました!
「言語」が作り込まれている定期更新型ゲームとして浮かんだのが「エターナルデザイアー」でした(現存するサイトでは「遥遠への標」さんが詳しい)。英語のアナグラムが中心の言語ですが、未知の響きとファンタジーらしい言葉の選び方が、魅力的な世界観に繋がっていたと思います。
正直自分はキャラクターの名前ひとつ取っても、その意味まで考えて来ませんでした。その出身世界と冒険する世界が異なることは珍しくなく、冒頭に書いた言葉(「名前の意味は?」)を向けられたら、「ドキッ」としてしまうところだったけれど、今回いただいた記事を読んで、これからは、出身元の言語であれ、冒険の舞台にコンバートされたものであれ、名前の意味くらいは回答できるように、出身となる場所の風土や歴史についてももっと考えて行こうと思いました。(R)

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